在宅介護

在宅介護を始めるときにおさえておきたい3つのポイント!介護保険の基本知識も解説

両親や家族が在宅介護を必要としたときに「何から始めたら良いのかわからない」という方が多いのではないでしょうか。

はじめのうちは、在宅介護に必要な手続きや準備に対して「複雑で難しそう…」とイメージを持ってしまうでしょう。

そこで本記事では、これから在宅介護を始める方に向けて「在宅介護を始めるときに必要な3つのポイント」について、わかりやすく解説していきます。

この記事を読んで「どこで手続きをしたら良いのか」「必要な準備は何か」を理解し、在宅介護をスムーズに始められるようにしましょう。

在宅介護を始めるときのポイント3選

ではさっそく、在宅介護を始める際の必要な手続きや準備について見ていきましょう。

在宅介護を始めるときにおさえておきたい3つのポイントは、次のとおりです。

  1. 介護保険の利用
  2. 住環境の見直し
  3. 資金の準備

在宅介護を始める際、まずは介護保険を利用するための準備をしなければなりません

また、介護保険を利用するにあたって、住環境の見直しと資金の準備をあわせて行う必要があります。

在宅介護で利用する介護保険とは?

介護保険とは、介護が必要な方に対して介護サービスを提供する社会保険制度のことです。

介護保険の利用により、少ない自己負担で介護サービスを受けられるため、在宅介護を始めるには介護保険を利用するほかありません。

ただし、介護度によって受けられるサービスが異なります。

在宅介護でさまざまな介護サービスを利用したいのであれば「要介護認定」を受ける必要があることを覚えておきましょう。

介護サービスの利用には要介護認定を受ける必要がある

前述したとおり、受けられる介護サービスは介護度によって異なります。

介護度は「要介護1〜5」「要支援1・2」と段階が分かれており、身体機能や認知機能、生活機能などから判断されます。

ここで重要なのは、在宅介護に必要な介護サービスを利用するためには「要介護認定」を受ける必要があるということです。

要介護認定は、1人で日常生活を送ることが困難な状態で、かつ運動能力や理解力、思考力が低下していると判断された場合を指します。

受けられる介護サービスの種類

要介護認定を受けると、さまざまな介護サービスを受けることが可能です。

在宅介護で利用できる介護サービスは、以下のとおりです。

訪問介護訪問介護員が自宅を訪問し、食事や排泄などの日常介助を行う
訪問入浴介護自宅に簡易浴槽を持ち込んだうえで、介護スタッフや看護スタッフが入浴介助を行う
訪問看護看護師が自宅に訪問し、医師の指示に基づいて必要な医療ケアを行う
訪問リハビリテーション理学療法士や作業療法士、言語聴覚士が自宅に訪問し、医師の指示に従い必要なリハビリテーションを行う
夜間対応型訪問介護介護スタッフが夜間に自宅を定期巡回し、必要であれば食事や排泄などの日常介助を行う
定期巡回・随時対応型訪問介護看護介護スタッフと看護スタッフが連携しながら自宅を定期的に訪問し、24時間随時対応

その他にも、自宅から施設を訪れてサービスを受ける「通所型サービス」や、一時的に施設に宿泊できる「短期型入所サービス」なども介護サービスに含まれます。

通所型サービスは設備が完備された施設で、十分な介護サービスを受けられるというメリットがあります。

また、短期型入所サービスは専門的な介護を受けられるほか、介護に携わる家族への負担を一時的に軽減することも期待できます。

もちろん以下のように、在宅介護の支援を目的とした福祉用具のレンタルや販売、住宅改修といったサービスもあるため、多角的な支援を受けることが可能です。

福祉用品レンタル車椅子や電動ベッド、歩行器などの必要な介護用品を貸与するサービス
福祉用品販売入浴補助用具や簡易浴槽、腰掛け便座などの介護用品を購入するサービス
住宅改修バリアフリーを目的とした住宅改修(支給限度額は20万円)

ただし、介護保険を利用して介護サービスを受けられるとはいえ、1〜3割の自己負担が発生します。

過不足なく介護サービスを受けるには、ある程度の資金調達が必要であることも念頭におきましょう。

在宅介護を始めるときの手続き方法

在宅介護でさまざまなサービスを受けるには、介護保険の利用が必須であるとわかりました。

したがって、在宅介護を始める際は介護保険申請の手続きを行う必要があります。

介護保険における利用申請の流れは、以下のとおりです。

  1. 地域包括支援センターに相談する
  2. 要介護認定を受ける
  3. ケアプランを作成する

では、もう少し詳しく見てみましょう。

地域包括支援センターに相談する

介護保険の利用申請を行う際は、地域包括支援センターに問い合わせてみましょう。

地域包括支援センターには社会福祉士やケアマネジャーが常駐しているため、介護に関する知識を熟知したスタッフに相談可能です。

近くに地域包括支援センターがない場合は、市区町村の介護保険窓口でも申請できます。

ちなみに、申請には以下の書類が必要となります。

  • 要介護認定申請書(窓口で入手、もしくはWEBからダウンロード)
  • 介護保険被保険者証(65歳未満の場合は健康保険証)
  • マイナンバー
  • 身分証明書(運転免許証やパスポートなど)

上記の書類を持参できるのであれば、家族が代理で申請することも可能です。

要介護認定を受ける

介護保険の申請が受理されると、担当者が自宅を訪問し、介護サービスを受ける本人への聞き取り調査が行われます。

聞き取り調査が終わった後、この結果をもとにコンピューターによる一次判定が行われます。

そして、一次判定の結果と主治医によって作成される「主治医意見書」をもとに、二次判定が行われ、最終的に介護度が認定されます。

なお、申請から介護度の認定までは1ヶ月ほどかかるので、なるべく早めに申請しておきましょう。

ケアプランを作成する

介護度が認定されると、ケアマネージャーによってケアプランが作成されます。

ケアプランとは、介護対象者が適した介護サービスを受けられるようにするための介護計画書のことです。

ただし、ケアプランを作成してもらうためには、自分で担当のケアマネジャーを探さなければなりません。

もしケアマネジャーの探し方がわからない場合は、地域包括支援センターや市区町村の窓口に相談すると、居宅介護支援事業所を紹介され、ケアマネジャーをつけてもらうことが可能です。

在宅介護を始めるときに必要な準備

在宅介護を始めるにあたり、介護保険の利用とあわせて介護に適した環境を整えるほか、資金の用意が必要となります。

では、在宅介護に必要な準備について、もっと具体的に掘り下げていきましょう。

住環境を見直す

在宅介護は、介護に適した自宅の環境を整えることが不可欠です。

住環境の見直しにあたって、はじめに介護を行う部屋を決めましょう。

そして「部屋からトイレや浴室までのルートは近くて安全かどうか」「家族とのコミュニケーションを取りやすいかどうか」など、安全性かつ快適性を見極めます。

もし改善点が見つかれば、あらかじめ整備しておくことが大切です。

手すりやスロープの設置工事といった、バリアフリーに関する工事であれば、介護保険から補助金が出ます。

一方、住環境を整えたら介護用品も取りそろえることが必要です。

取りそろえるべき介護用品の例は、以下のとおりです。

  • 電動ベッド(介護用ベッド)
  • 車椅子
  • 歩行器(シルバーカー)
  • ポータブルトイレ
  • シャワーチェア
  • 昇降機

介護用品をそろえる際は、各用品の寸法をチェックして、自宅に設置できるかどうかを把握しましょう。

資金を準備する

在宅介護では住環境を整備したり、介護用品を取りそろえたりする費用を確保しなければなりません。

また、自己負担が少ないとはいえ、介護サービスの利用料も発生します。

さらに、介護度が進んで在宅介護が難しくなった場合、施設介護も視野に入れるタイミングが来るかもしれません。

そのため、早い段階で資金を調達しておくことが重要です。

在宅介護を始めるときの注意点

はじめて在宅介護に直面する方は、必要な手続きや準備に気を取られてしまい、戸惑うことも多いでしょう。

ここでは、在宅介護の見落としてはいけない注意点についてまとめました。

利用者本人との話し合いを怠らない

在宅介護を始めるなら、介護を受ける本人とその家族で話し合いをすることが大切です。

話し合うことで、本人の気持ちや要望をできるかぎり尊重できるほか、介護する側もされる側も、ストレスを溜めづらい環境を作ることができます。

また「在宅介護が難しくなった場合はどうするのか」といった将来を見据えた話も、早めに共有することがおすすめです。

ケアプランを丸投げしない

ケアプランは、適切な介護サービスを受けるための重要な計画書となります。

基本的に、ケアプランはケアマネージャーによって作成されますが、もちろん介護サービスを受ける本人の意思も尊重されます。

もし、ケアプラン作成をケアマネジャーに丸投げしてしまうと、思うようなサービスを受けられず、ミスマッチを感じてしまうかもしれません。

適切な介護サービスを受けるためにも、ケアプランの作成には積極的に要望を伝えることが必要不可欠です。

まとめ

在宅介護を始める際、はじめに介護保険の申請手続きを進めましょう。

介護保険を利用することで、訪問介護サービスや通所型サービス、福祉用品レンタルなどのサービスを少ない自己負担で受けられるほか、介護負担の軽減効果も期待できます。

また、住環境の見直しや資金調達もあわせて行うことが不可欠です。

ただし、ケアマネジャーにケアプランの作成を丸投げしたり、家族間でのコミュニケーションを怠ったりすると、適切な在宅介護を実現することはできません。

今回紹介した「介護保険の利用」「住環境の見直し」「資金の準備」といったポイントをふまえ、心身ともに無理のない在宅介護を始めてみましょう。